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――その男のことを真っ先に思い出したのは、ただ単純にその容姿だ。
丸く大きな鼻に、蛙を思わせる離れた目。
顔中に痘痕(あばた)がある、醜い男だった。
どういう経緯だったか思い出せないが、とにかく俺はその醜男の傍にいた。
傍にいて、男の商売を眺めていた。
「こちらにございますのが、すぐそこの店で買ったばかりの名刀。なまくらじゃあございません。疑うなら店主に聞いておくんなさい」
男はつらつらと口上を述べると、俺の腕を取り袖を捲った。
「さぁて!お立ち会い!」
声高らかに刀を掲げ、それを俺の腕に押し当て、迷い無く引いた。
「キャア!」
腕から一筋の血が流れ落ちると、群集から悲鳴が聞こえた。
「あぁ、お嬢さん方。驚くのはこれからだよ。
――さて。ここに取り出したるは、信濃の国の山奥深くで作られる希少な秘伝の薬」
男はしたり顔で懐から陶器を取り出す。
蓋を開けると、白濁色の液体が揺れた。
「旦那。まばたきせずによーく御覧なさいよ」
その液体を指で掬い取り、血が滲み出る刀傷へと擦り込むと乱暴に手拭いで血ごと拭き取る。
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