431人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「何が百五十を越えたの?
何か寄越せって、兄ちゃんお腹空いてるの?あのおじさんにご飯もらってないの?」
幼子は醜い男の方を指差すが、説明するのも面倒だった為、幼子を急かす。
「いいからさっさと何か寄越せ。父親の命が尽きるぞ」
幼子は訳が分からない顔をしながらも懐を漁る。
「…なんにもない」
「食い物じゃなくて良い。何でもいいから」
「…何でも?団栗独楽ならあるよ」
そう言うと小さな団栗に楊枝を刺したものを差し出してきた。
「いただきます」
手を合わせてから幼子の掌にある団栗を摘む。
「それ、食べるの?」
「食わん。それよりこれを持って行け」
自分の着物の裾を三寸程裂くと幼子の手に握らせた。
「こんなの、いらないよ」
「持って行け。父親の懐にでも突っ込んでおけば父親は治る」
「治る?」
「腕は生えんがな」
幼子は益々首を傾げたが、いよいよ面倒くさくなったから追い払った。
最初のコメントを投稿しよう!