新月の章

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  「何が百五十を越えたの? 何か寄越せって、兄ちゃんお腹空いてるの?あのおじさんにご飯もらってないの?」 幼子は醜い男の方を指差すが、説明するのも面倒だった為、幼子を急かす。 「いいからさっさと何か寄越せ。父親の命が尽きるぞ」 幼子は訳が分からない顔をしながらも懐を漁る。 「…なんにもない」 「食い物じゃなくて良い。何でもいいから」 「…何でも?団栗独楽ならあるよ」 そう言うと小さな団栗に楊枝を刺したものを差し出してきた。 「いただきます」 手を合わせてから幼子の掌にある団栗を摘む。 「それ、食べるの?」 「食わん。それよりこれを持って行け」 自分の着物の裾を三寸程裂くと幼子の手に握らせた。 「こんなの、いらないよ」 「持って行け。父親の懐にでも突っ込んでおけば父親は治る」 「治る?」 「腕は生えんがな」 幼子は益々首を傾げたが、いよいよ面倒くさくなったから追い払った。  
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