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「はいっ、今日は豪華でしょ!?」
いつも以上に種類がある小鉢の乗った膳を俺の前に出すと、自分も対面へと座った。
「いただきまーす」
「いただきます」
対面に人間の存在があるのは未だ慣れないが、この少女に言っても聞かないことはわかっているから黙って箸を進めた。
「わ、雷。今の凄かったね」
「……」
「庭の木が倒れるかもって、おじさん達が心配してた」
「…お喋りを止めて箸を動かせ。そしてさっさと帰れ」
視線もやらずに吐き捨てると、少女は不思議そうに首を傾げる。
「昔話は?」
「……」
結局そうなるのか。
「だから話すほど覚えていないと」
「つまんない話でもいいの!話すことに意義があるんだから!」
どんな意義だ。
若干面倒くさい気持ちを感じながら、少女を見た。
期待するように輝かせる瞳は純真そのもの。
若草色の落ち着いた着物を着てはいるが、やはり童子にしか見えない。
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