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…こんな雨の日だから、良しとするか。
なんせ身体がだるい。
少女を追い出す気力も湧かない。
「…とりあえず、食え。話は食事が済んでからだ」
「……!うん!」
想定外の反応だったのか、少女は嬉しそうに顔を上げた。
「今日は雨だから特別だ。昔話をするのは、これでさい、」
「うわー、この青の小鉢のやつ美味しい!」
「……」
少女はそう言うと食事を掻き込む。
俺も溜め息と共に飯を飲み込み、自分の内を見つめた。
もやがかる記憶の中も、雨風の音が耳を占めていた。
雨、か。
『お前もいつか京に来い』
こんな雨の日に死んだ男の、低く、豪胆な声が頭に響いた。
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