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衝動的だった。
独り身の女に養える金などない。
亡くした子への償いのつもりだったのかもしれない。
自身の孤独を紛らわす為だったのかもしれない。
…共に死ぬ相手が、欲しかったのかもしれない。
「いいの?」
童子が女の目を見つめながら聞くと、女は一瞬狼狽える。
自分と一緒に居れば、早死にするのが目に見えているからだ。
女の中の冷静な部分が自身を止めようとするが、母性がそれを拒んだ。
「いいよ。一緒に暮らそう。贅沢な暮らしはさせてあげられないけど、二人で布団に入れば温かいからねぇ」
贅沢な暮らしどころか、明日食べる物すらないのに。
食事を終えると、女は井戸水で濡らした端切れで童子を拭いてやった。
きんと冷えた水は手の感覚を無くすほどだったが、童子は気にならない様子で、なすがままに拭かれていた。
桶に汲んだ水の縁が凍ってきた頃、綺麗に身体を拭き終えた。
薄汚れていて気付かなかったが、童子はなかなか綺麗な顔をしている。
歳は十ばかりだろうか。
作り物のような白い肌に大きな瞳。
体つきこそ子供だが、表情は大人顔負けだった。
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