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初めて会ったのはこの男がまだ青っちょろい餓鬼の頃だった。
俺が憑いていた家に養子としてやってきた。
見た目も雰囲気も、餓鬼大将そのものという印象だった。
「何だお前は。珍妙な奴だな」
その言葉に棘はなく、ただ単に面白い物を見たように愉しげに笑った。
笑いながら「食え」と言って渡された蛙を口に入れた時、男は慌てて俺の口に指を突っ込んだ。
「たわけ!何をしておる!あやかしは冗談も通じんのか…!」
顔面蒼白になりながら蛙を取り戻した男は、そうやって俺を怒鳴った。
金遣いが荒いくせに俺の力を頼ろうとしない。
その理由を聞いた時は耳を疑った。
「そんな金、気味が悪いだろう。使ったら祟られそうだ」
こんな豪胆な荒くれ者が祟りが恐いとは。
それもあってその男と益のやり取りはなかったが、良く俺の座敷を訪れては下手くそな絵を描いては見せた。
「見せただけだ。お前にやった訳ではない」
そう付け加えながら楽しそうに筆を滑らす男の姿は、月日を経て恰幅が良くなっても子供以外の何者にも見えなかった。
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