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「…わらし、人の死期がわかるの?」
行灯に柔らかく照らされながら、少女が目を見開いて俺を見ていた。
ふと手元を見れば、何時の間にか茶が用意されている。
その湯呑みを手に取れば、じんわりとした暖かさが掌を伝った。
「…そうだな。関わった者の死は、わかる。直前だがな」
「へぇ…」
少女はそう呟くと、眉を少し垂らした。
「わらし、可哀想だね…」
「可哀想?」
「知ってる人の死期がわかるなんて、可哀想だよ」
少女は湯呑みに視線を落とすと顔を上げなくなった。
言っている事の意味が分からず、俺は首を捻った。
「人間など、いつかは死ぬ生き物だろう。俺からすれば、人間の一生などほんの僅かに過ぎん。いつ死のうと何も思わん」
その言葉に少女は顔を上げるが、何故か哀しげに笑っていた。
あの男もこの少女も、難しい表情をする。
「結局、その男が言う置き土産というのもわからず終いだったな」
小さく呟けば、少女も俯いたまま口を開いた。
「…そのうち、わらしにもわかるよ。その人がわらしに伝えたかった事が」
「お前にはわかるか」
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