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驚いて少女の顔を見れば、少女はまた少し笑った。
「人間なら、わかるよ。
安心した。わらし、ちゃんと良い人とも関わっていたんだね」
「どういう事だ?あの男は俺に何を伝えたかったんだ?」
身を乗り出すために置かれた手が湯呑みを倒した。
少女は素早く湯呑みを拾い上げると、今度は愉しげに笑いながら畳を拭きだした。
「それはいつかわらしが自分で気付かないと駄目だよ」
「気付くも何も、今の今までその男の存在すら忘れていたんだ。俺にわかるわけがない」
「ねぇわらし。わらしは気になるんだよね?その人が伝えたかった事が何なのか」
少女は俺の目を覗き込むと、当たり前のことを確認するかのように聞いてきた。
「だからお前に聞いているんだ」
「じゃあ大丈夫。今はその人の事、思い出したんでしょ?もっともっといろんな事を思い出せば、いつかきっとわかるよ」
「だから」と続けながら、少女は膳を持って立ち上がった。
「次も昔話してね!」
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