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ぱちり。
ぱちり。
頬杖をつきながら火鉢の中ではぜる炭をじっと見ていた。
煌々と輝く炭が端の方から少しずつ白い灰に覆われはじめる。
まるで雪が積もっていくようだと思った。
フッと息を吹きかけると灰が舞い、炭は煌めきを取り戻す。
それを繰り返すうちに、炭は徐々に小さくなっていった。
「…儚いものだな」
炭も、人間も。
恰幅の良かったあの男の事を思い出してから、いやにこんな事ばかりを思う。
生まれ落ち、瞬く間に成長し、呆気なく死ぬ。
その辺の畜生となんら変わらない。
ただ、異常に何かに執着する生き物なのだ。
「わらし、寒くない?火を持ってきたよ」
声がかかると襖が開けられ、炭十能を持った少女が顔を覗かせた。
その顔はだらしなく緩んでいる。
「…なんだ」
「見て!火鉢で焼いて食べようと思って、お餅持ってきたの」
少女は懐から白い包みを出し、それを開いて嬉しそうに角餅を見せた。
「炭を移しちゃうね」
火箸で真っ赤におきた炭を摘み、火鉢に入れる。
炭同士がぶつかると火の粉が舞った。
金網を乗せた上に、鉄瓶と餅を四つを置く。
「待つ時間がまた楽しいよね」
少女は笑いながら火鉢に手をかざした。
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