431人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
この容姿ならば、伝手(ツテ)さえあれば良い暮らしも出来るだろうに。
まだ明るい刻だったが、薄い布団に身を寄せ合いながら、童子の頭を愛おしそうに撫でた。
「…名前は●●にしようか」
「うん」
「●●…許しておくれ……。一緒に死んでくれないか。…養うと言っても、うちにはもう何もないんだよ」
風が強く吹き込み、ガタガタと家が揺れた。
目に入るのは粉雪だ。
「何もないと、死ぬの?」
「死ぬよ」
「何があれば死なないの?」
「お前は面白いことを聞く子だね。今までどうやって暮らしてたんだい。…そうだね、まずは食べ物かね」
女は呆れながらも、童子にお伽話でもするかのように優しく語り掛けた。
「後は、暖をとるための炭」
「食べ物と、炭?それがあれば生きていけるの?」
「生き延びる事が出来る、と言ったところかね。生き延びると生きていく、では大きく意味合いが違うからねぇ…」
ほぅ、と女が溜め息をつけば、薄暗い部屋に白い息が上がった。
最初のコメントを投稿しよう!