眉月の章

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  「さあ、今日も稼がせろよ!」 男はそう言うと俺を店の前に立たせた。 男は座敷童というものを勘違いをしていた。 わからぬなら身体の内に納めておけばよかったのだ。 そろそろ座敷で寝て過ごす生活が欲しいと思っていた頃、ひとりの女が金を借りに訪れた。 何回か来たことのある女だったが、これまで高利貸しの男はこの女には金を貸さなかった。 だがこの日の男は違った。 女の肩を撫でながらその耳元に顔を寄せる。 「どうだ、どこかで一泊しないか?そしたらまぁ、金を考えてやらんでもない」 周りが見えぬ、愚かな奴め。 俺はその日に男の元を離れた。 江戸へ戻って暫くした頃だった。 分厚い雲から雪が舞う季節。 処刑場の前を通りかかった俺の耳に、僅かに女の声が聞こえた。 「どうかしたかい?」 隣を歩いていた連れの男が黒の外套を翻して俺の顔を覗き込む。 その男に断りを入れ、自分の羽織を預けると処刑場へ足を踏み入れた。 処刑場は厳粛な雰囲気など皆無で、異様な程の騒ぎだった。  
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