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次に目を開けた時、俺は元の形のまま処刑場の外の、外套の男の腕の中にいた。
「困るなぁ、勝手なことをしてもらっては。大丈夫かい?」
腕から降ろされながら、今し方感じたばかりの感覚を追うように自分の首筋に手を当てる。
「彼女から何を貰ったんだい」
「何も」
そう返せば、外套の男は目を見張る。
「何も?…では、君は与えただけか?」
「貰おうにも、女の両腕が塞がっていたんだ」
外套の男の手から羽織を受け取ると、本来の目的地に向かって歩き出した。
「気の毒に。恋人と逢瀬の夢でも見ながら逝けたのかもしれないが。
…彼女は死してなお、辛い目に遭うだろうね」
どうなろうと後の祭。
処刑場に同情の目を向ける外套の男を後目にその場を離れた。
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