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「わらし…」
話し終え、視線を上げると真っ青な顔の少女と目が合った。
眉間に皺を寄せ、何か言いたげな唇は微かに震えていた。
「わらし…首を切られた事があるの…?」
「俺が憑いた奴だがな。まぁ、俺が切られたようなものか」
ふと火鉢を見る。
火は消えかけ、緩い火で炙られ続けた餅は膨らむ事なく煎餅のように硬くなっていた。
「話はこれで終わりだ」
頬杖していた手を下ろし、身体を起こした。
火鉢を挟んで向かい合う少女の肩が僅かに揺れている。
火も緩くなったこの部屋は寒いんだろう。
…若しくは、首を切り離されても死なぬ俺に、畏れを感じたか。
「…わらし。どうして女の人に憑いたの?」
「憑いても良いと、女が言ったからだ」
「わらしが憑きたかったの?」
少女が白い息と共に問う。
その言葉を反芻して顎に手を添える。
「…さて、どうだったか。
そうだな。憑きたかったのかもしれん。あの女の最期は自分が招いたものだと認めれば、楽に逝かせてやるのが贖罪だと、後のことも考えずにその瞬間を請け負ったんだろうな」
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