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「わらし、気付いてよ」
少女が火鉢を除け、俺の隣ににじり寄る。
その目には、何故かうっすらと涙が溜まっていた。
自分の眉間に力が入る。
「わらしは、その女の人に罪悪感を持ったんでしょ。可哀想って思ったんでしょ…!?だから最期くらい痛みと恐怖を代わってあげようって…!」
「黙れ」
肩を跳ねさせた少女を見ずに、餅と鉄瓶が乗った金網を火鉢から下ろした。
仄かに色付く灰に息を吹きかけると、その下から緋色の炭火が顔を出す。
「わらし…?」
その炭火を素手で摘み上げ、掌に握った。
「わらし…っ!」
じゅう、と皮が溶ける音がする。
焦げる匂いと共に煙が立ち上り、油を吸った炭は途端に黒くなる。
「何してるの!やめてよ…!」
青ざめた少女が俺の手を乱暴に取り、無理矢理開かせて握っていた炭を叩き落とした。
掌から指にかけて炭と灰が張り付き、真っ黒に焦げていた。
「冷や…冷やさなきゃ…!」
「いらん」
「でも」
「見ろ」
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