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女は驚いて腕の中の童子から距離をとった。
決して大きな声ではないのに、頭の中に直接響くような声だったからだ。
女が無意識のうちに息を潜めて童子を見ていると、童子は大きな目をゆっくりと閉じた。
「お金なら大丈夫」
「え?」
女が聞き返しても童子からは返事がなかった。
どうやら、眠ったらしい。
ガタガタ、と家が震えて、寒さから逃れる為に童子を再び胸に抱えた。
奇妙な童子だが、こうして小さな子を抱いて眠るのは久しぶりで、愛おしさが込み上げる。
お互いの温もりに包まれて、二人は夢の世界に堕ちた。
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