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聞き慣れない節回しの唄が薄暗い座敷に響く。
歌いながら上機嫌で茶の支度をする肩までの髪の少女に目を向けた。
昨日は着物だったが、今日は洋服なぞ着ている。
着物で来いと言ってあるのに、少女はその日の気分で装いを決めているようだ。
「…煩い」
「何よ、もう」
寝そべったまま呟けば、肩までの髪の少女は頬を膨らましてこちらを睨んだ。
どっちがわらしだ。
そう言ってやりたかったが、言えば噛み付いて来るだろうから黙っておく。
「はい、お茶」
「…おい。作法を見ていたが、何だその淹れ方は。きちんと湯を冷ませ」
「わらしって変なところにこだわるよね。口煩い小姑様みたい」
「……」
口だけは達者な小童が。
そんな風だから何時までも作法がままならんのだ。
「あっ、今の顔!呆れたって顔してる」
「実際呆れている」
「良かったね。それも感情の一つだよ」
肩までの髪の少女は嬉しそうに笑うと、色とりどりの干菓子が乗った盆を茶の横に置いた。
揃ったところで身体を起こし、手を合わせる。
「いただきます」
「はーい」
熱い湯呑みに口を付けると、少女が懐紙の上に干菓子を取り分けて寄越した。
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