十日夜の章

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  駕籠を守る者達は刀に柄袋をしていた。 だが、不可解なことにそれは外せられないだろう。 俺がこの場にいるだけで、情勢は一気に変わるのだ。 武装していた者が柄袋が外れぬと喚きながら斬り付けられるのを見て、多くの人間が駕籠を見捨てて循走した。 果敢にも素手や鞘で戦う者もいたが、かなうはずなく指や耳を落とされ雪が朱に染まっていく。 そこら中から咆哮や呻き声、金属音や火薬がはぜるような音が聞こえた。 脇目も振らずに寄ってたかって駕籠を狙う様は美しいとは言えないが、それだけ必死さが窺えた。 終結はあっという間だった。 駕籠の中の男は引きずり出され、既に瀕死であったがその場で首をはねられる。 首をはねた男が歓喜の雄叫びを上げながら自身の刀の先にその首を引っ掛けて高々と掲げた。 襲撃犯から歓声が湧き上がる。 …終わったか。 血を滴らせながらぶらぶらと揺れる首をしげしげと眺める。 …何をしたか知らんが、なんとまぁ怨恨にまみれた首だな。 死してなお価値のある首なのだろう。 「ぐあぁ!!」 刹那、首を掲げていた男が背後から残兵に深く斬り付けられた。 首を取っても油断は命取り。 ぶら下げていた首が鞠のように雪の上に転がり落ちる。 流石にこれは致命傷だろう。  
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