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赤城高校と綾人の家はそれほど離れてなく、徒歩十分という距離だ。
腕時計で時間を確認しつつ交差点を渡ろうとしたとき、横でガタッという音がした。
綾人が横を見るとそこには、車椅子に座った少女が溝にはまってしまった車椅子をなんとかしようと必死になっていた。
綾人はそんな少女を見て見ぬふりをしようとしたが、良心に動かされ気が付けば車椅子の少女に話し掛けていた。
「大丈夫?」
「えっ?」
少女は一瞬戸惑った様子で、声を掛けてきた綾人を目を丸くして見上げた。
「あ、車輪が溝にはまってしまって…」
「手伝うよ」
そういって綾人は車椅子の後ろに回って、後ろからゆっくりと車椅子を引っ張った。
あまり衝撃を与えないように引っ張ったつもりだったが、少し衝撃があったらしく少女は小さく悲鳴を上げた。
「きゃっ」
「っと、ごめん大丈夫だった?」
「いえ、大丈夫です。それより助けていただいて、ありがとうございます」
「いいよ全然。それより、どこに行こうとしてたの?」
「私最近こっちに引っ越してきて、今日から赤城高校に転入なんです」
「そうなんだ。だったら学校まで送ろうか?」
「いいんですか?」
「いいよ、僕赤城高校の生徒だし。あ、僕は『神崎 綾人』君は?」
「私は『柳瀬 栞』っていいます。よろしくです」
「うん、よろしく」
綾人は車椅子に座った少女、栞と一緒に学校に向かって車椅子を押しながら歩き出した。
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