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三ヶ月前に邸の裏の竹林で赤子を拾った。
血の様な深紅の衣を纏って泣いていた幼き少女。
引き寄せられる様に腕に抱いた瞬間に感じた愛しさ。
あぁ、守らなければと感じた頼りない身体。
縋り付く様に衣を握り締めてきた小さな手。
成長した今でも、あの愛しさだけは変わらない。
「月に何か深い思い入れでも?」
艶の心を動かすのは月の光。
月の出る夜は、深く暗い黒耀に少しだけ光が宿るように思える。
訊ねると珍しく向けられる瞳。
「………あや…」
形の良い紅の唇から発せられる鈴の声。
「ん?」
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