序説

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『若様!!』 ガタンっ 大きな音と共に入り口の格子が乱暴に開け放たれ、大勢の者が押し入り二人の前に平伏す。 狩衣をまとった青年や少年を筆頭に、武官姿の者、巫女姿の者や豪勢な唐衣裳装束に身を包んだ女が部屋中に溢れて、頭を下げている。 『……っ何事だ?!ここを何処だと心得る!!』 少年は、腕に抱く少女を守るように背に隠し立ち上がると、眼下に平伏す者達へと叫びかかる。 『無礼は承知の上。私共はそちらの姫君に用があるのです。こちら へとお渡し下さい』 心ではそうは思ってはいないのであろう。 狩衣姿の青年は取り澄ました表情で淡々とそう言葉を紡ぎ一礼すると立ち上がり少年の傍まで足を進め、片膝を付いた。 目の前で傅く青年の容貌は何処か少女と似通っている。 『……さぁ、かぐや姫。分かっていますね?』 感情のこもらない、しかし少しばかり戸惑いを含ませた声と瞳が少女を射抜き、女の様に美しい手が少女へと差し伸べられた。
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