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『若君!?おやめ下さっ……』
初めて聞く僕達の焦る声に笑みが零れる。
少女を抱いた少年はそのまま風のように消え去った。
後には何も残らない。
ただ、鮮血で汚れた床が見えるだけ。
『………くっ…。
捜せ!何としてでも捜すのだ!!』
叫んだのは狩衣姿の青年。
全身、返り血の付いた袖を翻し、下の者へと命令を下した。
それは、とてもとても寒い日だった。
身体の中の全てのものが凍りつきそうなほどの。
とてもとても寒い……。
凍てつくような夜だった。
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