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「殿の予測通り織田軍の勝利にございます。」
牙の報告に重治は、静かに頷いた。
『尾張のうつけは、やはり擬態であったか』
永禄3年、尾張の国に戦乱雲が発生し『街道一の弓取り』今川氏2万5千の大軍が、上洛を目指し進軍していた。
たかが2千あまりの小勢織田氏に敗れるなどとは誰も考えていない。
圧倒的な兵力差に当初劣勢だった織田氏は、少数の兵力で敵本陣の奇襲攻撃に成功し、勝利を収めた。
戦国史の転機となった桶狭間の戦いである。
その後、今川氏は、衰退。
織田氏は、勢力を拡大して、三河を掌握した徳川氏と同盟を結ぶ。
『美濃を制する者は天下を制する。
織田氏が上洛を果たす為にはまずこの美濃を通過しなければならない』
重治の言言葉に牙は、
「つまり間もなく織田は、美濃攻略に乗り出すのですな。
わかりました。引き続き尾張に潜入して織田の動向を探ります」
牙は、重治の意図を理解して再び尾張へ向かった。
この頃美濃は、織田信長の妻濃姫の甥で、斎藤義龍の息子龍興が国主となっている。
龍興の父義龍は、祖父の道三と戦い勝利したが病で急死した。
龍興は、政務を疎かにして、酒に溺れ、それを諌める有能な家臣を遠ざけた。
自分のお気に入りの者達をとりまきとした為、美濃の政は乱れていた。
かつての同盟関係は、事実上崩れ去った。
「道三の後継者は、信長である」との大義名分を掲げて織田氏が美濃に進軍を開始する。
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