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油売りから国主であった土岐氏を追い落とし取って代わった斎藤道三(サイトウドウザン)。
蝮(マムシ)の異名を持ち、美濃をじわじわと支配していった。
重治の父 竹中重元(タケナカシゲチカ)は、勇猛な武将で天文3年、菩提山城(ボダイヤマジョウ)を築き主城とした。
美濃小勢力土豪が、単独で生き残ることは不可能。
重元は、国主である斎藤氏に属することとなった。
「屋敷に閉じこもっているよりは、外に出て、日の光を浴びるのも悪くないぞ。重治」
『はい。父上』
重治は、青白い顔で兵法書を読んでいた手を止め城を出た。
ゆっくりと周りを警戒しつつ歩く。
ひょこひょこ歩いているのは、癖ではなく、周りを警戒してのことだった。
付近の物騒さは際立っていた。
盗賊の類いはうようよしている。
先日も家臣の子が行方知れずとなったが発見されてはいない。
重治は、日々悩んでいた。
体が弱く基礎体力が無い。
体格に恵まれず槍が重くて上手く振り回すことが出来ない。
勇猛武将の息子としては、致命的な欠陥であると感じていた。
長く歩くと息が切れてきた。
『限界か』
大きな石の上に腰を下ろす。
『迷ったか』
辺りを探りながら少しずつ移動する。
体力の限界がが危機を招き重治は、石につまずき、転倒し坂を転がった。
足をくじき、頭を打ち意識が遠退いて行った...。
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