656人が本棚に入れています
本棚に追加
織田氏の密使が、稲葉山城の重治の元を訪ねる。
「稲葉山城を引き渡せば、美濃半国。更に織田氏の軍師として迎え入れる」
織田氏の申し入れは、最大限譲歩した重治にとって破格の好条件であった。
しかし、重治は、即決で断る。
『こたびの稲葉山城奪取は、国主龍興を諌める為に行ったことであり、謀叛にあらず。
その目的を達成したからには、いずれ主龍興に城を帰す。
従って稲葉山城を織田氏に譲るつもりは、一切無い』
迷いなく言い切った。
信長は、密使の報告を信じられ無かった。
「無欲なのか策略か?
知者の考えることは理解不能。
いずれにしても簡単に諦める訳には、ゆくまい」
信長は、その後何度も密使を送るが、その度に重治は、断っている。
『人は利により動く』と考える信長がいくら好条件を出そうと『利より信義を重んじる』重治の心は、揺るがない。
立身出世や城、領地への欲が無い重治の心を理解出来る者は、居なかった。
最初のコメントを投稿しよう!