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織田信長が天下に名をしらしめたのが、桶狭間の戦だとすれば、竹中半兵衛重治のそれは、こたびの稲葉山城奪取であった。
数の上では、圧倒的不利。
敵の虚をつく戦略。
しかし、大きな違いがあった。
信長の目的は、野望に満ち、敵大将の首をとり、戦に勝利すること。
一か八かの賭けに近い奇襲戦であった。
数千の兵で、万の敵を破る奇襲戦は、確かに偉業ではあった。
しかしながらそれは、ごくまれに成功をおさめた例が過去には、存在した。
一方重治のそれは、あくまでも主を諌めることが目的で、難攻不落の稲葉山城を占拠した。
誰も思い付かない綿密に練られた戦略と成功への確信。
しかしたった16人の家臣で、成功させるのは、神業に近い。
重治以外には到底出来ない事であり、その戦略を知ったとしても誰も実行しようとは、しまい。
いや、たとえ実行したにしても未遂に終わるのが関の山であった。
守就は、
「二人の天才、織田信長と竹中半兵衛は、対極にある。
信長は、天下統一の野望を持ち勝つ為には、手段を選ばない。
残忍な秩序の破壊者。
一方、半兵衛には、野心自体が無い。
あらゆる情報を分析して、戦を勝利に導く、その戦略を立案して、実行する。
兵法、戦略のみに興味を持ち、芸術家として采配を振るう。
目先の地位や領地、恩賞などには、一切興味を示さない。
信義に厚く、命を粗末には、しない」
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