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守就にも重治の心が理解出来ない。
当初から、国主龍興を諌めることが目的であると守就に告げていた。
それは、重々承知していた。
なれど、現実に稲葉山城を落とすとは、思いもしまい。
『良政を行うと約束して頂けるならば、龍興様に城を明け渡しまする』
とさらりと述べる重治がもどかしい。
守就は、
「わしが、後ろ盾となり美濃の諸将を調略して味方に付けるゆえ城を返すのは思い留まるのじゃ!」
何度も説得するが、耳を貸さない。
日課のように天守に篭り書物を読み耽っている。
「半兵衛殿に立身出世の欲は無し。
利より信義を重んじる。
稲葉山城の主となった今も、野望や野心は芽生えず己の知略が成功したことを純粋に喜んでいるのだ」
『無欲無敵』の『天才軍師』
守就は、実感していた。
「この男に勝てる者は、世界を探してもただの一人も居まい」
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