656人が本棚に入れています
本棚に追加
菩提山城に戻った重治は、
『竹中の家督は、久作に譲り渡す。我は、隠居して栗原山に篭る』
これには、皆が驚きあわてふためいた。
早速舅守就が、止めに入る。
「婿殿は、まだ21歳ではないか。隠居は、早過ぎる!」
しかし、重治は、冷静な眼差しで、守就を見つめ答える。
『稲葉山城の天守からの眺めは、絶景でした。
これが、天下人の望む景色なのかと。
確かに高揚感は、ありました。
しかし、先の短い軟弱な我が、この城をこの国を自ら治め続けるのは不可能。
虚しくなりました。
己の矜持に従って、国主龍興様に城をお返しして、良政が行われるかを見極めたいと考えています。
隠居しても、変事が起きれば、駆け付けますゆえ何卒お許し下さい』
頭を下げた。
ここまで言われると守就も従うしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!