1将 篭城(ろうじょう)

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 重治に油断はない。  13歳の少年でありながら頭の中には、無限の戦略が渦巻いていた。  小柄で槍を使うことは不得手。  しかしながら剣の腕は確かである。  隙がなく俊敏な動きと一撃必殺の奥義を極めている。  それを人前でひけらかすことは無く、愚鈍を装っている。  ゆえに、他者から警戒されず城主として不適とみなされて来た。  逆に3歳年下の弟久作は、父に似て体格も良く生命力に満ち溢れている。  活発で毎日近隣の童と戦のまね事をして遊んでいた。  槍を使いこなす怪力の持ち主。  家臣は、兄と弟が逆であればよかったとなげいている。  正反対の二人ではあったが、とても仲が良かった。  重治は、普段から久作に投石の為の石を集めさせたり、迎撃の準備をしていた。
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