序章

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「最早、戦を継続するのは、不可能。  降伏するしか道は無い」  天正8年、別所長治(ベッショナガハル)は、決断した。  長期に渡る三木城兵糧攻めにより食糧が底をつき、己の命と引き換えに家臣と民を守ることを考えたからである。  使者を送ると秀吉は、要求を受け入れ急ぎ食糧を城に運び込んだ。 『敵が降伏したなら、食糧を与え、飢えた敵兵と民を救うのです。それが秀吉殿の徳となる』 「そういたしましょう。半兵衛殿の進言に間違いは無い」  秀吉は細く青白い手を握りしめ涙しながら約束した...。  秀吉軍の戦略を立案実行してきたのが、竹中半兵衛重治であった。  重治は、無用な血が流れることを避ける為にこの策を好み実行した。  いつしかそれが調略と並び秀吉軍の得意戦略となる。  可能な限り城を囲み戦わず降伏させる。  残忍な織田軍にあってその策は、異質であったが最終的に最大の成果を上げていた。  他方面で苦戦する中、軍内で秀でていたのが、秀吉軍であった。  戦が不得手であった秀吉軍に兵法が何たるかを実戦させ、戦わずして勝つことが最良の策であることを学ばせた。  例えるならば、魚は水がなければ、泳ぐことは、出来ない。  秀吉が魚ならば、重治という水を得たことにより戦乱の世を泳ぐことが出来た。  残忍な信長より秀吉に惹かれ、天下への道筋を付けた『天才軍師』は、無欲にして無敵であった...。
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