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俺がまだ90センチくらいだった頃、母から『天使』の話を聞いた事がある。
悪い道に入りそうな子供がいると、天使が天から舞い降りて来て、優しくその子を助けてくれると言うのだ。
その頃の俺は本気で天使を信じていた。無邪気な笑顔で、半日も雲の谷間を見つめていた事もあった。
だが、母に過労で死なれ、親戚をたらい回しにされてからは、天使どころか人間さえも信じなくなった。
俺が笑顔になったのは、雲の谷間を見つめたあの日が最後となった。
「なにが天使だ!」
僕はそう叫ぶと、穴だらけの靴で近くのゴミ箱を蹴った。
だが、自分の中でかすかな期待が膨らんでいく事に、動揺を覚えずにはいられなかった。
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