天使は見ていた

6/7
前へ
/18ページ
次へ
 俺の心の奥底に、砂のような苦い感情が染み込んできた。 「やっぱり、天使なんていないんだ……」口からは思わず本音が突いて出ていた。  やはり俺は信じていたのだ。こんな目にあってもなお。  だがそんな俺は、ただのバカでみじめな男に過ぎないと思い知らされた。  少年は手を掴まれたまま、やはり、あの大きな目でジッ……と俺を見つめている。  俺は溜息混じりでその場に座り込むと、やや大人振りながら、なぜそんなに俺に付きまとうのか? と訪ねてみた。  すると少年は、あんたの方がいつも俺の目の前に急に現れるんだ、と言い出した。  なんだって?
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加