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 その時だった。  ゴール下のリバウンドの奪い合いの最中に、なんで唯のことなんか思い出すのか。…それは、やっぱ、それだけ集中できてないってことで…。  グギッ!  鈍い音が、身体に響いた、と思ったら、脳天に突き抜けるような痛みがきた。  思わず、その場に倒れこんだ。心臓が足首にあるみたく、ドグンドグンと脈をうち、その度に痛みが身体にはしる。  着地に失敗して、ひねった、と、ようやく自分の状況を把握できた。 「陽!大丈夫かっ!?」 中学からのバスケ仲間の、本山が、かけよってきた。 「やべぇ、ひねったわ…」おそるおそる、バッシュを脱いだら、かなり腫れてきている。 「腫れてきてんじゃん!やべぇよ!すぐ、病院行けよ!!」 「大丈夫だよ、こんなの」他の部員の手前もあり、強がってみたが、かなり痛い。 「練習、続けてくれ。おれ、ちょっとこの足、診てもらってくるわ」  なんとか立ち上がり、隅に置いてあったカバンをつかんだ。 「ちゃんと、診てもらえよ」 本山が、足を引きずるおれに、後ろから声をかけた。 「お前がいない試合なんて、ありえないんだからな」
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