夏祭り

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 夏休みになってすぐ、学校では講習が行われる。講習には、二種類の人間が参加することになっていて、一種類は、勉強ができて、有名大学を狙ってさらに勉強するやつ。もう一種類は、…そう、おれのように、部活命で、勉強そっちのけだったやつ。つまり、赤点軍団に対しての、地獄の補習ってことだ。 「っだぁ!!あっぢぃんだよっ!!」 本山が、うなり声をあげ、バサッと、分厚いテキストを放り出した。  本山も、もちろん地獄の補習に参加する組だ。  今、二時。本山とおれは、図書室で明日までの課題と格闘している。もともと、勉強むきの脳ミソでない挙げ句、このだまってても汗がダラダラ流れる状況で、課題なんか進む訳がない。 「おれ、もうダメだわ。うち帰って、ちょっと寝てからやるわ。こんなんでやっても、脳ミソ溶けるだけだもんよー」  本山が、音を上げた。 「陽、どうすんよ?」 「おれかー…きっと帰ってもやらねーし、もう少し学校でやってくわ」 「了解。したらまた明日な。」  本山が、適当にテキストをかばんに突っ込んで、図書室を出て行ってから、おれは、机にだらっとしながら、テキストをパラパラとめくった。  …残念、ちんぷんかんぷん。  一緒に帰ればよかったかな、なんて考えが頭をよぎった時、カタンと、近くに誰かが座る音がした。
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