夏祭り

4/8
前へ
/251ページ
次へ
「なぁにー?そのやる気ないかっこ。」  ガバッと身体を起こすと、目の前に唯が座って、クスクス笑いながらこっちを見ていた。 「びっくりしたー。何やってんだよ、唯」 「あたしも講習なのー。ま、誰かさんみたいに、赤点補習じゃないけどね〰」 にくったらしいことを言ってくれる。でも、悔しいことに、唯の成績は学年でも上から数えた方がかなり早い。 「なんだか、苦労してそうね、その課題に。」 「こんなん、訳わかんねーんだよ。唯、教えろよ」 「ちょっと。それが人に物を頼む態度?そんなんじゃ、教えてあげなーい」 ああ、くそ!何てにくったらしい!!…でも、明らかに、おれの立場が弱い。  仕方なく、 「…唯さん、お願いします。教えてく…ださい。」 頭を下げてみた。 「んー、どうしよっかなー?」 「そこをなんとかっ!」 顔の前で手を合わせ、拝むふりをする。 「そしたらね、あたしの言うこと一つ聞いて?」 「なんだよ?何かまたわけわかんないこと言うんじゃないだろうな?」  唯は、プクッとほっぺたを膨らませた。 「わけわかんないことじゃないもん」 「だから、何だよ?」 「あのね…明後日のお祭り、一緒に行って?」  バクバクと、自分の動悸が一気に速くなってきた。 「ど、どうしたんだよ?」 「みんな、用事あったり、彼氏と行くって言うんだもん。陽なら、行く相手もいないかなーって思って。」 「なんだよ、失礼なやつ!」  唯が、上目遣いにおれを見る。…悔しいことに、おれが一番唯をかわいいと思ってしまう表情だ。 「ね、だめ?」   「…仕方ねーな…」 「やった!そしたら、エスコート、よろしくぅ!」 唯が、胸の前で小さく拍手をする。  唯にとった態度とは裏腹に、おれの気持ちが最高に舞い上がってしまったことは、言うまでもない。
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3415人が本棚に入れています
本棚に追加