3415人が本棚に入れています
本棚に追加
川原に並んだ、出店。ずらっとならんだちょうちん。毎年のことだが、祭りはかなり混んでいた。しかも、今日は、花火大会もあるのだ。
「はぐれんなよ」
「わかってる」
二人、並んで、出店をのぞく。唯の手には、さっきおれが取ってやった、紅い小さな金魚が入った袋が下がっている。
「迷子になってもしんねーぞ」
「もう!いつの話よぅ」
唯が、おれの腕をやわらかく、こづく。
まだ、親父が生きてたころ、おれとゆいの家族で、この夏祭りにきた。そのとき、はしゃぎすぎた唯は、一人でどんどん行ってしまい、迷子になったのだ。
あの時、唯が祭り会場のはずれにある、神社の境内でひざをかかえて泣いているのを見つけたのは、おれだった。そう言えばあの時も、ほんのりピンクのゆかたを着ていた。
「そろそろ、花火、始まるんじゃない?」
「そうだな。その前に、唯、なんか飲むもん、いるか?」
「うーんと、そしたらね、ラムネが飲みたいな」
「はいよ、お姫さま。したら、ちょっとここで待ってろ、買ってくるから!」
唯を待たせて、おれはラムネを二本買ってくる。
唯のとこに戻るのと、
「よう!陽!!」
と、声をかけられるのは、ほとんど同時だった。
最初のコメントを投稿しよう!