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振り向くと、本山や、バスケ部連中、そしてバスケ部のマネージャーだった典子がいた。みんな、それぞれ祭りでゲットした物を持っている。
「陽も着てたのかー。一人?」
「あ、いや…」
本山は、おれの影に立っている唯に気が付いたようだ。
「あ、そーゆーことね」
にまにましながら、本山がうなづく。
「いや、これは、ちがっ…!」
背中にいる唯の顔が気になってしかたない。
「なになに?陽くんと、唯ちゃんって、付き合ってんの!?」
マネージャーの典子が、遠慮のない声を張り上げる。
「いや、ちがうんだって、これはっ!」
条件反射のように、でかい声で否定してしまう。
「ちがうの?そしたら、一緒に回らない?」
なんてことを言ってくれるんだ、典子のやつ!!せっかくの、二人の時間をっ!!
「あ、いや…」
もごもごしているおれの手を典子がつかむ。
「ね、いいでしょ!?唯ちゃんも!」
ちらっと見えた唯は、困ったように笑っている。
「はい、きーまりっ!」
典子が、おれの手をつかんだまま歩きだす。
…何やってんだよ、おれはっ!!!
「…わ、悪いっ!」
典子が、きょとんとおれを見る。
「唯さ!あ、足が痛いっててさ、もう今日は帰るつもりだったんだっ!悪いっ!」
唯が、びっくりしたようにおれを見るが、何も言おうとはしない。
「だからっ!ごめん!!」
典子が不満そうに、
「なんだぁ、つまんないのー」
と言ったとき、本山が、
「ま、そゆことならしかたねーよな。行こうぜ、ほら典子も」
みんなを、うながす。
「じゃな、陽、唯ちゃん」
すれ違いざまに、おれを見て、にやりとする。
「二人でゆっくりなー」
ひらひらと、手を振りながら、去っていく本山たちを、おれと唯は無言で見送った。
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