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 目は、ぱっちりと二重。「目は口ほどにものを言う」なんて言葉があるけど、唯の目はまさにそれだ。そして、さらりとくせのない髪が、肩より少し下まで伸びている。 「あの頃は、もう少し長かったよな…」  ふと、親父が死んだ頃を思い出して、そんなことが口から出た。 「ん?なんか言ったぁ?」唯が、チャリンコをこぎながら、振り返った。 「いや、唯、髪切ったのか?」  唯は、きょとんとした顔をして、 「ううん?切ってないよ。どしたの、急に?」 「あ、いや、悪い。なんでもないわ。ちょっと昔のこと思い出してさ」  あわてて、とりつくろったような返事をしたおれに、唯はふっとほほえんだ。
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