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私はその物体を右手の人差し指と親指で掴み、左手を使い千切ってみた。
すると、その物体から血が流れ出た。
私はその物体の先端を至近距離でまじまじと見てみた。先端には小さな口の様な物があった。
私は全身に悪寒が走ると共に、ちゃんと確認しなかった自分自身を悔いた。
「くそっ、こいつは地球で言うヒルの様な生物か。そんな物を布団として敷いていたなんて」
キノコの上にあった時はピクリともしなかった。たぶん夜行性なのだろう。
私はすぐに寝床から降り、ワン太を抱えて降ろした。
私は幸いにもそんなに影響はなかったが、ワン太はやはり元気が無い。立ち上がるのもやっとという状態だ。
5年も一緒に暮らしているペットで家族同然だ。見捨てるわけにはいかない。
私はワン太を両腕に抱え、休ませられる場所を探した。
遠くに水の音が微かに聞こえてきた。私はその音を頼りに歩いて行った。
うっそうと生い茂る草木をなんとかかき分けて行くと、急に視界が開け、目に飛び込んで来たのは川だった。
川はとても綺麗で、濁りなどは一切なかった。
私は近くの平らな岩にワン太を降ろし、両手で川の水を掬った。思っていたよりも冷たかった。
その水をワン太の口元に持って行くと、ワン太はチロチロト舐め始めた。しかしまだ辛そうに見える。
これからどうするべきか途方に暮れていると、そんなに遠くない場所で煙が上がっているのが見えた。
もしかしたら、この星の住人かもしれない。
本来なら、じっくり様子を見てから動くところだが、ワン太がこんな状態なのでそんな余裕は無かった。
もし、住人が善人ならワン太を治療して貰いたかったのだ。
私は再びワン太を抱きかかえ煙の上がった方へと向かった。
綺麗に伐採されている樹木達がちらほら見え、私は住人がいることを確信した。
前方に人工的な建物が突如として、目に入り私は足を止めた。
「村だ」
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