薔薇少女1ー1

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ある所に薔薇が大好きな少女が居ました。 少女は大きなお屋敷に独り暮らし。 お庭には沢山の真っ赤な薔薇。 いいえ、正しくは真っ赤だった薔薇。 少女は年中長袖で、足も隠し、外に出る時は帽子を深く被り誰とも目を会わせようとしません。 外といっても自分の大きなお庭だけ。 誰とも話そうとしません。 ある日少女はお庭に出て、薔薇の手入れをしていました。 そしてそこへ少女より少し年下の女の子が歩いてきました。 女の子は前々から少女に興味を持っていたのです。 大きな門を果たして少女は開けてくれるでしょうか。 「こんにちは」 少女は答えません。 「ねぇ、少しお話ししない?」 少女は黙々と真っ赤な薔薇にお水をあげています。 「綺麗な薔薇だね」 少女は手を止め、女の子の方を見ました。 その時でした。 風が吹き少女の帽子が舞い上がります。 あらわれた少女の顔は青白く、けれども大きな瞳が美しいのでした。 女の子は暫し見とれてしまいます。 「こんなに沢山の薔薇を一人で手入れするのは大変だよね?」 少女は女の子を凝視しています。 「よかったら、あたし手伝いたいな。綺麗な薔薇を近くで見てみたい」 少女は無表情に、足元に視線を落としました。 くすっ… その時少女が一瞬笑みをこぼしたのに、女の子は気が付きませんでした。 「ねぇ、お庭に入れて?」 少女はゆっくりと錠を外し、ゆっくりと門をあけました。 「ありがとう…」 本当に開けてくれるとは思わなかった女の子は驚きながらも嬉しそうです。 少女はゆっくりと前へ歩きました。 「あ…待って!」 それからと言うもの、女の子は毎日少女の家へ訪ねていったのです。
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