第一章・―記憶―

15/15
前へ
/30ページ
次へ
 首を傾げて微笑む君は、妻の癖を真似ているのか。……それとも、君は……。 「七海(ななみ)」 「また。いつかきっと、逢えるから」  名前を思い出した私に歩み寄り、顔を覗き込んで、手を握り励ますように言ってくれる。  七海……、君は、君なのか?  あの光は、妻なのか?  愛している。愛している。私はきっと、いや絶対生きて、君とまた出逢うよ。約束する。いつかきっと……。  しっかり握りしめて瞳をとじる。溢れる涙を拭う時間すら惜しくて、意識を失う寸前に、はっきりと言った。 「七海……、愛している」 「私もよ。愛する貴方」  微かにだが、確かにそう聞こえた気がして、最後に力強く頷いた――。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加