第二章・―想い―

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 まるでデコレーションツリーに点いている電飾のようにちかちか光るホタルに見惚れていると、静かな、優しい声がした。 「綺麗ですね」  反対側のカーテンも開けると、別の病室で寂しそうに過ごしているのを時々見かけていた、俺と同年代くらいの少女が微笑みかけてきた。  首を傾げ、はにかむ彼女を見たのは初めてで、こんな表情も出来るんだとちょっとドキッとする。  月明かりに照らされた左目下にあるホクロがチャーミングで、俺も微笑み返す。 「何故かいたんですよ」  いつの間にここにきたんだろうかと、そんな疑問はさておき、他の入院患者は熟睡している。起こさないよう俺も小声で、すると彼女が嬉しそうな表情になるので、びっくりして息を呑む。
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