第一章・―記憶―

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 目が覚めると、見た事もない光景が広がっていた。  ゆらゆら、ゆらり、螢の光が舞い散る橋の上で、どうやら眠りこけていたらしい。  眠気覚ましに頭を振る。そうして辿る記憶。  ……なにも、覚えていない……?  ここにくるまでの記憶がない。何故ここで眠っていたかの記憶もない。私は一体……誰だ……?  立ち上がる。朱に塗られた欄干に手をついて見ると、木板の橋を渡りきった向こうに朱の鳥居と何かの塔らしき建物が在った。  聞こえてくる愉しげな話し声。不安に駈られた私は知らず、ゆっくりと橋を渡り、声のする方へと、誘われるように歩こうとした。  ――その時。
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