第二章・―想い―

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 どうして応えただけでこんな嬉しそうなんだ? そう思っていると、彼女が更に意外な問いかけをしてきた。 「あの……。声が聞こえるように、そっちに座っても良いですか?」  これには少し迷う。  彼女と話したのも、声を聞いたのも初めてで、今夜は不思議な時間でも流れているのかと、だけどやはり、その魅力に負けて素直に頷く。  静かに移動する彼女。やがて隣に座ると、微かにベッドのスプリングが軋む。 「初めまして。私、七海(ななみ)っていうの」 「初めまして。俺は、螢(ほたる)」 「変わった名前」  彼女がくすくす笑う。自己紹介するといつもこうだ。慣れているし、彼女が笑っても、不思議と不快な思いにはならない。
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