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それどころか、いつもなら「そんな事はない」と躍起になって返すところなのだが、それも忘れて、少し照れくさい感情をもて余す。
「なんかさ。親が、俺が生まれた時に、この名前じゃないとって思ったんだって」
ホタルが俺の太ももに留まる。薄い青のパジャマにホタルの淡い光が映えて、とても綺麗だ。
「私、ホタル好きなんです」
「そう?」
「この光を見ていたら、大切な何かを思い出せる気がして」
大切な、何かを……。
俺は夢を見る。不定期に、不安定な時期に多くて、見る度に痣が疼き、“思い出せ”と急かされる。
ふと、そんな話を彼女に洩らす。
絶対馬鹿にされると思って、今まで誰にも言った事なんてないのに、彼女にならすらすらと話せる。
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