第一章・―記憶―

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「あら。見ない顔ね?」  急に声をかけられて振り向くと、そこには提灯を提げた美女が立っていた。  ゆらゆら、ゆらり。提灯の灯が、怪しく揺れる。 「ねぇ。ここにくるのは、初めて?」  どうだろう。記憶がないから分からない。返答を迷っていると、美女は長くさらさらの金髪を可愛らしく揺らし、首を傾げてはにかんだ。 「大丈夫? ねぇ。こっちにいらっしゃいよ。里の中を、案内してあげるわ」  赤い瞳、白磁のような肌に白い着物がよく似合う。場違いにもそんな事を思っている内に、私は勝手に手を取られ、橋を渡りきりいつの間にか里の中とやらへ辿り着いていた。
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