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「……返して……返して下さい……! あの光を、私の妻を……!」
やっとの思いで、それだけを絞り出す。
相変わらずの揺らめき、幻想的な光、愉しげな話し声、まるで蜃気楼のような光景。
「思い出した?」
「あれは妻だ。私の妻だ。長年連れ添って、護ろうとして、だけど護れなかった。私の大事な、唯一無二の半身だ……!」
身が引き裂かれるように辛い。苦しい。
こんなに大事で、絶対忘れてはいけない事実を、一体私は、どうして忘れてしまったのだろう。
忘れてはいけなかったのに。覚えて、覚え込んで、全てを懸けていなければいけなかったのに。
――どうして……?
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