第一章・―記憶―

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「残念だけど、それは出来ないの。……だけどこれだけは言えるわ。彼女は貴方に愛されて、護られて、とても幸せで、だから未練なんて残さずに、次の生を授かる事が出来るの」  ……次の、生を……?  次の……。  ここは、何処だ?  あの光達は、螢は、美女は……一体何だ? 「分からない? 螢の光はね、昔から、“命の光”だって言われているのよ」 「命の……」  だったらあれは妻だ。間違いなく妻だ。  私と理解っていた筈なのに、忘れていなかったのだと願いたいのに、どうして何も、声すらかけてくれなかったのだろう。 「幸せだったからよ。貴方に愛されて、幸せだった。未練なんてなかった。だから、貴方に生きていて欲しくて、生まれ変わる道を選んだんだわ」  妖艶な笑みを浮かべる。
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