僕の隣の天真爛漫

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 開け放った窓から、心地好い風が入ってくる。九月の空気は、ゆっくり過ごすのにこの上なく合うように感じられた。読書の秋とはよく言ったものである。 「あー、こんなとこにいた!」  しんみり黄昏れていると、バタバタとうるさいのがやって来た。年の割に小さな体つきで、走るのに合わせて長い黒髪がなびいている。山岸藍瑠(ヤマギシアイル)。僕の幼なじみだ。 「なんでいつも勝手に行っちゃうかなぁ? 待ってって言ってるのにーっ」 「そっちこそ、なんでもう少し大人しくできないんだ?」  ここは図書室。既にほかの利用者はジト目でこちらを睨んでいる。 「もう、そんなのいいからさっさと行くよ!」  しかし藍瑠は気にも留めない。天真爛漫という言葉はコイツのためにあるのかもしれない、と最近思うようになった。
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