僕の隣の天真爛漫

5/7
前へ
/17ページ
次へ
 ここで一つ断っておくと、僕と藍瑠はいつもこうして出かける訳ではない。藍瑠は部活に入っていて、週に三日が活動日。空いた二日のいづれかと、たまに土日に、藍瑠は僕を連れ回すのだ。いつ、どこへ行くかもコイツの気分次第。まったく迷惑な話である。  窓の外の景色が流れて行く。二駅も過ぎるともう知らない街だ。とりあえずこの場は今日の目的について語る少女に、相づちを打つことに努めた。  宇部山は、秋の始まりにふさわしく紅葉が始まったばかりだった。緑の中にぽつぽつと赤や黄色が映える。一週間もしたら、紅葉狩りに人が集まるだろう。 「こないだ来たときは北を探したから、今日は南側を探します! それらしい痕跡を見逃さないように」  電車でずっと語っていたが、ここには山男の噂があるらしい。紅葉の山男って、なんだそれ。 「返事がないぞ、軍曹っ」 「へいへい、隊長さん」 南、か。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加