俺と隣の天の邪鬼

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 ぱたん。携帯を閉じた。「どうだ」と言わんばかりの表情で隣を歩く巧に、素直な感想を伝える。 「この流れで主人公死ぬの、不自然すぎない?」 「そうかな? 僕はやっぱり他の終わり方が思いつかないや」  これでもう10作目にはなるだろうか。巧が俺に読ませてくれた、公開前の携帯小説。ファンタジー、ホラー、ミステリー、ラブコメと、ジャンルは毎回違うのに、巧は毎回、バッドエンドを書く。 「いやいや、流石にこの流れはおかしいだろ! なんで告白して3秒で死ぬんだよ。主人公呪われてんのかよ」 「違うよー、マコトくんは浮かれてて、トラックに気づかなかっただけだよー? 告白して、浮かれて、ばたんきゅー。普通な流れでしょ?」 「だから! それが不自然なんだよ! どこの普通だっ!」  梅雨明けの住宅街に、俺のつっこみが虚しく響いた。しかし巧は動じない。ノーリアクションはちょっと酷くないか?  いつも巧の作品は、最後以外は、なかなかおもしろい。でもこんなオチじゃ、とても「いい話だね」なんて言えやしない。コイツが書くと、勇者は負けて、探偵は冤罪をおこし、恋人は結ばれない。登場人物が不憫でならない。
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